映画『鹿の王 ユナと約束の旅』感想ネタバレ解説考察/結末は?謎の病の秘密は?治療法は?
人気小説の映画化。東乎瑠(ツオル)帝国に囚われたヴァンは、山犬襲撃後に発生した謎の病・黒狼熱(ミッツァル)混乱時に幼女ユナと逃亡。ヴァンの抗体をめぐり、暗殺者や天才医師が追うが…。犬の王の継承者は誰?(ネタバレ感想あらすじ↓)
映画名/邦題 | 鹿の王 ユナと約束の旅 |
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日本公開日 | 2022/2/4 [予告] 上映時間:114分 |
監督・キャスト | 安藤雅司・宮地昌幸[キャスト] |
映倫区分 | 日本:G(年齢制限なし) |
配給/製作 (画像出典) | 東宝/Production I.G |
日本興行収入 | 2.5億円 (興行収入ランキング) |
平均評価 平均:100換算 | (興収・評価: 2024.8.15更新) 68(私の評価は含まず) |
シリーズ 関連作品 | SF/ファンタジー映画一覧 |
キャラ・ランキング(キャスト/出演者)
個人的なキャラクターランキングです。
※キャラクター名(キャスト/出演者/声優)
- ヴァン(堤真一)アカファ王国の「独角」最後の戦士。ユナと逃亡。黒狼熱の抗体を持つ?
- ユナ(木村日翠)アカファ王国の身寄りのない謎の少女。ヴァンと逃亡。黒狼熱の抗体を持つ?
- ホッサル(竹内涼真)東乎瑠(ツオル)帝国の天才医師。黒狼熱の謎を追う
- サエ(杏)アカファ王国の刺客。抗体を持つ者を追う狩人
- トゥーリム(安原義人)アカファ王の懐刀。ツオルへの反乱を計画。サエにヴァンの暗殺を指示
- マコウカン(櫻井トオル)ホッサルの従者
- オーファン(藤真秀)火馬の郷/ひうまのさとを守りたい戦士。ツオルへの反乱を計画
- ヨタル(阿部敦)東乎瑠(ツオル)帝国皇帝の次男。ホッサルに病の調査を指示
- アカファ王(玄田哲章)東乎瑠(ツオル)帝国への反乱を企む
- ケノイ(西村知道)山犬を操れる犬の王。ヴァンを後継者にしたい
ネタバレ感想『鹿の王 ユナと約束の旅』解説と評価
以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!
原作は上橋菜穂子の小説?監督と声優について
映画『鹿の王 ユナと約束の旅』の原作は、上橋菜穂子のファンタジー小説『鹿の王』です。本作は本屋大賞と日本医療小説大賞をダブル受賞。シリーズ累計250万部を突破。上橋菜穂子は『精霊の守り人』『獣の奏者』等でも有名です。
監督デビューとなる安藤雅司は『もののけ姫』『君の名は。』のアニメーターでした。もう1人の宮地昌幸監督は『千と千尋の神隠し』で宮崎駿の助手をつとめた経歴の持ち主です。
主人公ヴァンの声優の堤真一は、本作がアニメ声優デビュー作です。ホッサル役の竹内涼真も、アニメ声優デビューです。暗殺者サエ役の杏は『バースデー・ワンダーランド』等でアニメ声優の経験があります。タレント声優の他は実力派声優が担当。
上橋菜穂子の壮大なファンタジー叙事詩を、2時間足らずの映画でどう表現できるのか期待と不安が混在してますが楽しみです!(観る前の感想)
事前知識は?アカファ王がヴァン殺害を命じた理由は?
冒頭に文字だけで説明があります。東乎瑠(ツオル)帝国がアカファ王国に攻め込んだが、黒狼熱(ミツツァル)という謎の病の流行で撤退。アカファ王はツオル皇帝に従属し、ゆるやかな併合状態に。ミツツァルもおさまりつつありました。
そんな時、ツオル帝国の囚人などが強制労働させられてる岩塩坑で、山犬の襲撃があり関係者は全滅。投獄されてたヴァンは、山犬にかまれた少女ユナを救おうとして自分もかまれ気絶。ユナに起こされ、不思議な力で牢を破壊してユナと逃亡。
一方、ツオル皇帝の長男ウタルも鷹狩りで病に感染。皇帝次男ヨタルは天才医師ホッサルを岩塩坑の調査に。ホッサルは山犬にかまれ抗体を持つ脱走者の血を欲します。アカファ王は狩人サエをヴァン捜索に出し、密令で殺害を命じます。
その理由は、黒狼熱(ミツツァル)を活用してツオル帝国の弱体化計画が進行中だから、抗体の血の分析で「アカファ民は感染しない」というウワサの真偽を明らかにされたくないからです。
序盤のネタバレあらすじは以上。東乎瑠(ツオル)帝国とアカファ王国の関係性は把握しておかないと、以降のストーリー理解が難しくなりますね。黒狼熱(ミツツァル)の感染度は不明ですが、死体からは不織布マスクなしでも感染しなさそう。
原作小説が書かれたのはコロナ禍の前ですが、このような感染症に関する物語がコロナ禍で公開されたのは皮肉ですね。今の社会と共通する部分もあるため理解はしやすいのですが。
ツオル皇帝の長男ウタルはクズ中のクズで、アカファ民がミッツァルに感染しないのを証明するために、アカファ王の側近トゥーリムに感染傷口をなめさせようとします。様態急変で事なきをえますが、後の展開を知ってると…(後述)。
ヴァンとユナの正体は?サエ心変わりの理由は?
ヴァンの正体は、アカファの聖地「火馬の郷/ひうまのさと」に侵攻してきたツオル帝国軍を、少人数で足止めした戦士団「独角/どっかく」の頭でした。馬ではなくピュイカ(飛鹿)に乗るのが特徴。逃亡時も立派なピュイカを見つけます。
ユナは、岩塩坑の近くで孤児になった幼女が、岩塩坑で働く女性に預けられたようです。ヴァンとユナは、アカファとツオル帝国の国境近い村に滞在。しかしサエに見つかり、アカファのトゥーリム軍が山犬と攻めてきて、ユナをさらいます。
追うヴァンは、狩人サエに射抜かれ重傷を負うが、医師ホッサルに救われます。サエは、娘ユナへの愛を感じヴァン殺害をやめて同行。3人でユナを追います。ツオル帝国では長男ウタルが死に、次男ヨタルが「玉眼来訪」で火馬の郷へ侵攻開始。
逃亡中にヴァンは「アッシミ」という、山犬がきらう雑草を採取します。村では、ユナが上手にピュリカの乳しぼりをします。ヴァンもユナもピュリカの乳を飲むが、この周辺では飲む習慣がなくなってるそう。この2点は後の大きな伏線です。
ツオル人の村人が山犬に襲われそうな時、覚醒ユナが赤い人で犬を引っ張り女性を救います。この時点でユナの「犬の王」素質は開花してたのでしょう。ツオルの玉眼来訪は映画だけでは深く知れませんが、ヨタルは帝国統治のために政治的/宗教的イベントを利用してるだけに思えます。
犬の王の継承者は?ヴァン決断の理由とは?
ユナを追跡して「火馬の郷/ひうまのさと」近くに来たヴァン、ホッサルは、山犬を従えるオーファン達にユナの所へ案内されます。ヴァンは「犬の王」をケノイから引継ぐよう言われるが、ツオル民を黒狼熱に感染させる案には反対で拒絶。
火馬の郷までせまるツオル帝国の玉眼来訪へ、オーファン隊が攻撃をしかけます。帝国の先鋒に出された同じアカファのトゥーリムの腕を切り落として、オーファンは攻めるが帝国軍にはばまれます。そこへ「犬の王」ユナと山犬隊が突撃。
先代の犬の王ケノイは、ユナに継承したのです。ヴァンはユナの暴走を止めて、走り去るユナを追います。それをねらうアカファ兵を、裏切り者サエが足止め。ヴァンはユナから「犬の王」を継承し、ユナをサエにあずけて山奥へ去ります。
ヴァンが一度は断った「犬の王」を継承した理由は、将来あるユナに犠牲になってほしくないのと、まだ意味もわからないユナが戦争の道具に使われるのを阻止したかったからでしょう。ユナと違い、力を制御できたのは「鹿の王」の力も持ってたからでしょうか。原作未読で映画だけでは不明です。
ツオル帝国軍との戦争が『鹿の王 ユナと約束の旅』最大の見どころだと期待してたのですが、局所的な小規模戦闘で終わったのは少し残念。予算や時間の都合でカットしたのか原作どおりかは不明ですが、戦争をやめた理由は納得感うすいです。
戦争終結するにしても、映画『風の谷のナウシカ』のように上手く止めてくれないと「玉眼来訪ってその程度で終わり?」となってしまいましたよ。
謎の病の秘密と治療法は?ツオルだけ感染する理由?
医師ホッサルは、黒狼熱(ミッツァル)に感染した子ども達の延命をしながら治療法を考えます。ユナが「ヴァンの血」を見て「光ってきれい」と言うのを見て、ユナがアッシミ草を見た時と同じ反応だったのを思い出します。
また「ツオル民だけでなくツオルで育ったアカファ民」もミッツァルに感染し、その共通点は「(アッシミを食べる)ピュイカの乳を飲まないこと」です。その2点からホッサルは、アッシミこそワクチンや治療薬のもとと気づきます。
そしてツオル帝国のヨタル王に「火馬の郷のアッシミを採取するため、玉眼来訪の中止を進言」し受け入れられます。こうして東乎瑠(ツオル)帝国のアカファ王国への侵攻は、一時的かもしれないけど止まりました。
ホッサルはミッツァル治療薬を作るのに専念。少し成長したユナは、サエと共に暮らしてるようです。山に出たユナは、遠くに山犬を見つけます。大きなピュイカ(飛鹿)ものぞいたので、鹿の王と犬の王であるヴァンもいるのかも。
序盤から「アッシミ」と「ピュイカの乳」が強調されてたので何かあるとは思いましたが「アッシミを食べたピュイカの乳を飲むアカファ民は、ミッツァルに感染しない」ということだったんですね。山犬がアッシミを嫌うのも伏線でした。
オーファンや犬の王ケノイがすぐにツオル帝国を攻めなかった理由は不明ですが、継承者を探してたことからケノイの寿命が近かったのでしょうか。攻めるといっても山犬を率いての特攻なので、戦術を練った大軍勢には簡単に負けたでしょうけど。
アカファ王は「王国のためならヴァン1人の命は惜しくない」という思想の持ち主なので、ユナの犠牲も意に介さないのでしょう。そういう意味では、アカファ民にとってはツオル帝国になった方が幸せな可能性もありそうですね。
映画『鹿の王 ユナと約束の旅』私の感想と評価
上橋菜穂子の小説は未読ですが『精霊の守り人』『獣の奏者』とも漫画版は好きだったので、映画『鹿の王 ユナと約束の旅』が発表された時から心待ちにしてました。そしてほぼ期待どおりの世界観を見せてくれ感謝。
長編小説を2時間弱にしたのでダイジェスト感はあるが、原作未読でもわかりやすく改変されてて好みです。原作出版は2015年ですが、結果的に感染症拡大の時期に映画が公開され、時事的な意味もこめられてさらに理解しやすかったです。
凝縮した分、テーマはぼやけてる感じだが、ジブリ風のエンタメ映画としてはいいデキだと思います。本家ジブリを含めたランキングを作ったら、個人的にはベスト5に入りそうなくらい好き。小説に忠実版もいつかアニメシリーズで観たいかも!
私の評価 67/100(60が平均)
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