映画『リチャードジュエル』評価は?ネタバレ感想考察/実話は?真犯人は?爆弾発見できた理由は?

『リチャード・ジュエル』あらすじ概要
クリント・イーストウッド監督作。1996年、五輪会場近くでの爆弾発見者リチャード・ジュエルはマスコミにヒーロー視されます。しかし一転FBI容疑者とされ、弁護士に救いを求めるが…。冒頭の伏線は?リチャードの名言とは?(ネタバレ感想考察↓)
映画名/邦題 | リチャード・ジュエル |
原題/英題 | Richard Jewell |
日本公開日 | 2020/1/17 [予告↓]上映時間 131分 |
映倫区分 | 日本 G(年齢制限なし)USA R |
製作国 | アメリカ |
映画監督 | クリント・イーストウッド [キャスト↓] |
配給/製作/画像 | ©ワーナー・ブラザース/アッピアン・ウェイ・プロダクションズ、ミッシャー・フィルムズ、マルパソ・プロダクションズ |
シリーズ/関連 | サスペンス/ミステリ映画 |
日本興行収入 | 3.0億円(興行収入ランキング) |
世界興行収入 | 0.4億USドル [出典] |
製作費 | 0.5億USドル |
平均評価★★★★★78(私の評価↓は含まず)
|
『リチャード・ジュエル』予告動画
キャラクター(キャスト/出演者。日本語吹き替え声優)
ネタバレ感想『リチャードジュエル』解説や評価レビュー
この先はネタバレありの感想考察です。続編前作や関連映画は、サスペンス/ミステリ映画一覧もご参考に。
クリントイーストウッド監督やキャスト
監督のクリント・イーストウッドは、映画『リチャード・ジュエル』日本公開時点で89歳ですが、ほぼ毎年1本の映画をつくり続けるほど早撮りです。昨年2019年の『運び屋』では主演で実年齢以上の役を演じました。
個人的には『グラン・トリノ』『ミリオンダラー・ベイビー』等が好きです。最近の2016年『ハドソン川の奇跡』、2018年『15時17分、パリ行き』では、実話ベースの映画内に実話の人物を登場させる手法に驚かされました。
主演ポール・ウォルター・ハウザーは、初めて聞く名前だけど見たことあると思ったら、昨年2019年の『ブラック・クランズマン』や2018年の『アイ,トーニャ史上最大のスキャンダル』で存在感あった俳優ですね。アカデミー賞ノミネートされず残念。
弁護士ワトソン役のサム・ロックウェルは、最近では『スリービルボード』『バイス』『ジョジョ・ラビット』等で活躍を見せてる演技派俳優です。
ボビー役のキャシー・ベイツは『ミザリー』でアカデミー賞の主演女優賞を受賞後、出演するだけで場の雰囲気を変える個性派女優になってます。本作でもアカデミー賞、ゴールデングローブ賞ともに助演女優賞にノミネートされてます。

実話?あらすじ(ネタバレなし)
映画『リチャード・ジュエル』は、実話に基づいた物語です。リチャード・ジュエルも実在の人物ですが、名前を変えてる人物もいます。リチャードが容疑者とされたのは実際には2〜3ヶ月間らしいけど、真犯人逮捕は約7年後でした。
1996年7月27日、アトランタ・オリンピック開催中、警備員リチャード・ジュエルは、センテニアル公園のベンチの下に不審なバックパックを発見し州捜査局員に知らせます。周囲の人々を避難中、無数の釘が仕込まれたパイプ爆弾が爆発します。
死亡2人、負傷100人以上となるが大惨事を未然にふせいだので、リチャード・ジュエルは国の英雄とたたえられます。しかしFBIがリチャードを容疑者と考えてると実名報道され一転します。リチャードは弁護士ワトソンと共にFBIと戦うことになるが…
マスコミやFBI批判?無欲と欲望の闘争
映画『リチャード・ジュエル』を大枠でとらえると、出世欲や名誉欲求にとらわれたマスコミ関係者(主にキャシー・スクラッグス)やFBI(主にトム・ショー捜査官)と、無欲に正義を信じてうったえるリチャードや弁護士ワトソンの戦いです。
マスコミで報道されると大衆も味方につけられるので、結局はアメリカ合衆国の多くの国民vsリチャード・ジュエルと弁護士と母の3人という構図になります。
最近のクリント・イーストウッド監督作は、実話を基に一般庶民がヒーローになる姿を描く物語が続いてますが『リチャード・ジュエル』も同様です。ただし今回はヒーローになった直後、爆弾犯人の容疑者にまで落とされてしまいます。
人の人生を土足で踏みにじるマスコミの「言い逃げ」戦略や責任問題は、この映画のテーマの1つです。現代はマスコミを上回る勢いで一般人による、裏づけのないSNS拡散も問題になっていて、他人事とは思えません。
映画では、ママと暮らす独身の太った白人で銃器を複数所持するリチャード・ジュエルを、典型的な犯人像とする風潮を批判してます。オタク、引きこもり、漫画/アニメ/ゲーム/アイドル愛好家が、マスコミのえじきになるのは日本も同じです。
あと、クリント・イーストウッド監督は最近のポリコレ(性別/人種/民族/宗教等の差別偏見を防ぐ表現)の行きすぎ感に抵抗してるようにも感じます。具体的には下でも書きますが、本作のキャシー女性記者が枕営業したと描かれた部分です。
弁護士との出会いは伏線だらけ?
実話ではなく映画の内容をもとに書きます。リチャード・ジュエルは「警察等の法の執行官」を目指しながらも夢はなかなか実現せず、セキュリティ警備員などで食いつないでいました。ある勤務先でリチャードは、弁護士の電話を聞いてしまいます。
盗み聞きと疑われたシーンは、後に大事件の容疑者と疑われる伏線ですが、実直だが要領や間のわるいリチャードをよく表しています。その弁護士とは、後にリチャードを弁護するワトソン・ブライアント(サム・ロックウェル)です。
弁護士ワトソンも最初はリチャードを疑うが、きれた備品やスニッカーズの補充という仕事ぶりに感心し、昼休みに一緒にガンゲームで遊ぶ仲になります。
ちなみに、勝手に職場の引き出しを開けられたり、ゴミ箱あさられても文句言わないワトソンも変わり者だからこそ気があったのでしょうね。リチャードの度を越えた熱心な仕事ぶりは危うさにもなる事が表現され、伏線にもなります。
なぜリチャードは爆弾を発見できたのか?社会性の考察
リチャードだけが爆弾の入ったバックパックを発見できた理由は、常に公平に物事を判断しているからです。多くの人は成長するにつれ、常識にとらわれたり空気をよんだり忖度したりする習慣を身につけ、それこそが社会性と認識されています。
リチャードは学校での警備員時も、アルコールのとりしまりを厳格におこないすぎて、学長に正論で立ち向かい解雇されます。この学長は根に持つタイプだっため、後にリチャードが容疑者となるきっかけにもなります。
しかしそのブレずに妥協しない態度が、爆弾発見時に功を奏しました。最初は警官たちも「ただの忘れ物だ」ととりあわなかったけど、リチャードは「マニュアルに従うべき」と主張しつづけて、あきれ顔だった人たちを動かします。
普通の人なら「あきれ顔」を見せられたり空気を読むくせがついてると「まぁいいか」とあきらめます。それこそが学校や職場で学び続けた「社会性」であり「付和雷同な精神」です。教師/先輩の否定や教科書にない事を主張すると疎外されがちです。
火付け役は枕営業のマスコミ女性記者?実話?
クリント・イーストウッド監督作は、一般人からのヒーロー物語が多いので、同時にヴィラン(悪役)もよく登場します。映画『リチャード・ジュエル』の悪役というか火付け役は、アトランタジャーナル女性記者のキャシー・スクラッグスです。
キャシー・スクラッグス(オリヴィア・ワイルド)は、FBI捜査官トム・ショー(ジョン・ハム)から容疑者情報を引き出すために枕営業したように描かれてます。そのキャシーのスクープ記事により、リチャードの人生は転落を始めます。
ちなみにモデルとなった記者は既に亡くなってますが、アトランタジャーナルは枕営業を否定してます。また、仕事できる女性をおとしめるような表現方法に抗議の声もあがっています。制作側は情報源に基づいてると主張してるが真実は謎です。
第三者がながめるかぎり、この女性記者には同情するけど、真実をろくに調べもせず無実のリチャードを容疑者にしたてた行為のしっぺ返しなのは皮肉です。クリント・イーストウッド監督は、批判を覚悟して意図的にやったのではとも感じます。
映画の後半、アトランタジャーナルへ乗りこんで行った弁護士ワトソンとリチャード・ジュエルは、キャシー記者と顔をあわせます。ワトソンの糾弾で反省したキャシーは、その後のリチャードの会見で涙しますが、さすがに唐突に感じました。
映画ではリチャードが捜査対象をはずれた後も、キャシーからもアトランタ誌からも謝罪は見られません。実話で謝罪報道したのか不明ですが、リチャード・ジュエルの挽回活動はしてないだろうからマスコミ得意の「言い逃げ」だと思います。
FBIの違法捜査の闇がひどすぎる?
映画『リチャード・ジュエル』で騒動の火付け役は枕営業のキャシー記者ですが、彼女は映画の後半で反省が見られるのに対し、情報を提供したFBI捜査官トム・ショーや、ダン・ベネット捜査官らは、ラストまで反省することがありません。
特にトム・ショー捜査官は、捜査の進行を早めるためにキャシーに情報提供したようにも感じます。結局、FBI内部では情報をもらした者を特定せず、トム・ショーに全く制裁が加えられないのは実話とはいえモヤモヤした終わり方です。
そもそもFBIは最初からリチャード・ジュエルを爆弾犯人と決めつけてます。リチャードをだまして捜査令状なしで署内へ連行し、ビデオ撮影と偽ってミランダ警告(弁護士を呼ぶ権利)なしにサインさせようとする行為はひどい違法捜査です。
ジュエル家の物品押収は令状あるなら仕方ないけど、犯罪と関係ない物を持ち去るのは「いやがらせ」にしか思えません。キャシー・ベイツ演じるボビーの「タッパーや私の下着まで」の嘆きはコントのようだけど本人には悲劇ですね。
FBIは弁護士ワトソンやボビがいないすきに、犯行予告の電話内容「公園を30分後に爆破する」を、だましたリチャードに発声させて録音したり盗聴までします。この違法行為だけでも、FBIの捜査方法の闇がかいま見えます。
あげくの果てに、FBIはリチャードのゲイの友人に違法聞き取りして、リチャードもゲイのように報道させます。当時はまだLGBTQや同性愛者に批判的な世の中だったから世論もFBI側につきますが、FBIのやったことは人として最低の行為です。
リチャード勝利要因と真犯人は?その後は?
映画内では、リチャードが勝利する要因はほぼ描かれません。FBIはリチャードが犯人だという証拠をねつ造しきれず、法に従って仕方なく容疑者からはずします。しかし、ラスト近くのFBIとリチャード・ジュエルとの対決は見どころです!
弁護士ワトソンと共にFBI捜査官たちと対峙したリチャード・ジュエルは、一方的に責められた後に言います。「証拠はありますか?こんな状況で僕を逮捕したら、将来爆弾を発見した人は第一容疑者になりたくないから通報せずに逃げるでしょう」
この名言は衝撃的で胸をうたれました。腹黒い捜査方法が当たり前のFBI捜査官たちも、さすがに良心の呵責を感じるような顔になり、映画的にもすがすがしいベストシーンです。ただし真犯人も言いそうなセリフなので、疑う側の心理も察します。
それまで尊敬の対象だった正義の象徴FBIや警察を、リチャードの正しさが越えていった瞬間でもあります。実際は全く権力を持たないリチャードですが、実質上「法執行官」になった瞬間です。
このシーンが決め手になったわけではないけど、リチャードは容疑者からはずされ、やがて望む職業である警官として働き始めます。2003年に真犯人エリック・ルドルフが逮捕されたことを、弁護士ワトソンが知らせに来ます。
逮捕まで7年もかかったのは、リチャードがFBIを糾弾したように「こんな事してる間に真犯人が逃げたり、次の事件を起こすかも」のとおりになってます。
2007年に郡保安官補として勤務してたリチャード・ジュエルは、糖尿病からの心臓発作で亡くなりました。母ボビ(バーバラ)が注意したファストフードの食べ過ぎも要因でしょう。母ボビは健在でこの映画のプレミア上映を観賞したようですが、どんな心境だったのでしょうか。
『リチャード・ジュエル』私の評価と総括
クリント・イーストウッド監督が得意とする実話ベースのヒーロー物語として、また1つ語られるべき映画が誕生したと思います。過去の浮かばれない人物に光を当てる映画として『ワンスアポンアタイムイン・ハリウッド』にも近いです。
個人的には動きがあり非日常な『運び屋』の方が好みですが、本作の方が興味は持続しました。マスコミや国家機関FBIの恐ろしさ、リチャードの優しく正しいエピソード、無償?で尽くす弁護士ワトソンや母の愛など伝えたいことが明確なので、多くの人に観て考えてほしい映画です!
続編前作や関連映画は、サスペンス/ミステリ映画一覧もご参考に。
『リチャードジュエル』シリーズ順番・映画ランキングや映画賞
- 2020映画興行収入ランキング日本
- アカデミー賞(2003-2023年)
- ゴールデングローブ賞(2010-2023)
- キネマ旬報ベスト(2010-2023)
- アマプラ新着おすすめ
- ヒューマンドラマ映画一覧
- 実話映画一覧

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