『映画イチケイのカラス』感想ネタバレ解説考察/結末は?国家機密と衝撃の真実とは?
TVドラマから2年後。岡山県の入間みちおは、防衛大臣の傷害未遂事件を担当。イージス艦の衝突事故がからみ国家機密で職権発動も通用せず。一方、弁護士になった坂間の事件も関係してきて…。2つの事件のつながりは?(ネタバレ感想あらすじ↓)
映画名/邦題 | 映画 イチケイのカラス |
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日本公開日 | 2023/1/13 [予告] 上映時間:119分 |
監督・キャスト | 田中亮[キャスト] |
映倫区分 | 日本:G(年齢制限なし) |
配給/製作 (画像出典) | 東宝/C&Iエンタテインメント |
日本興行収入 | 10.8億円(興行収入ランキング) |
平均評価 平均:100換算 | 69(私の評価は含まず) |
シリーズ 関連作品 | TVドラマ映画化一覧 |
キャラ・ランキング(キャスト/出演者)
個人的なキャラクターランキングです。
※キャラクター名(キャスト/出演者/声優)
- 坂間千鶴(黒木華)元は第一刑事部の特例判事補。みちおの隣町で弁護士に挑戦
- 入間みちお/いるま(竹野内豊)元は地方裁判所第一刑事部の右陪席。今は岡山県の裁判官
- 月本信吾/つきもとしんご(斎藤工)坂間とバディを組む地方の人権派弁護士
- 小早川悦子(吉田羊。シキハマ株式会社の産業医。輝夫の妻)
- 木島昌弘(平山祐介。シキハマ株式会社の工場長)
- 鵜城英二/うじょうえいじ(向井理)史上最年少の防衛大臣
- 島谷加奈子(田中みな実。イージス艦と衝突死した船長の妻)
- 土井潤(柄本時生)岡山地方裁判所 秋名支部の右陪席
- 赤城公子(西野七瀬)岡山地方裁判所 秋名支部の左陪席
- 小早川輝夫(宮藤官九郎。町役場の職員。悦子の夫)
- 三田村武晴(尾上菊之助。シキハマ株式会社の顧問弁護士)
- 駒沢義男(小日向文世)イチケイ(東京地裁 第三支部第一刑事部)の部長裁判官
ネタバレ感想『映画 イチケイのカラス』解説と評価
以下ネタバレあり感想考察なのでご注意を!
原作は漫画?ドラマ続編?監督やキャスト
映画『イチケイのカラス』の原作は、浅見理都による同名漫画です。2021年4月からテレビドラマ化もされましたが、主人公や設定は原作から変更されたようです。今回の映画版は、TVドラマ版の2年後が描かれる続編です。
田中亮 監督はTVドラマ版『イチケイのカラス』のディレクターをつとめた人で、映画では『コンフィデンスマンJP 英雄編』までの3作品も監督。
主人公の竹野内豊は、最近は『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』等に出演。黒木華は『来る』『先生、私の隣に座っていただけませんか?』等が印象的。
TVドラマ未視聴でOK?こんな人へ(ネタバレなし感想)
原作漫画もTVドラマも未視聴でしたが、本作は完全に独立した映画として楽しめるので全く問題なしです。ただし、高齢客が何度か笑ってたシーンで私は笑えなかったので、過去作を観てた方が楽しめたのでしょうね。
ストーリーはあまり期待してなかったのですが、本筋の裁判劇は練りこまれた脚本のおかげでミステリー映画として期待以上によかったです。イージス艦の秘密や、地方を支える企業の闇に新しさはなかったが、時事的な複数テーマを組み合わせた謎は絶妙。
TVドラマに寄せたようなコメディ演出や人情寄りの殺人事件はカットして、本筋をもっと骨太に見せてくれれば傑作の可能性もあっただけにもったいない。邦画実写にも韓国映画のような濃厚な社会派作品を作れる監督がほしいですね。
出演者については、やはり黒木華がずば抜けていいキャラを演じてました。竹野内豊は『シンゴジラ』の役の方が好きだけど、こんなキャラも新鮮。他には、斎藤工、吉田羊、向井理が印象的でした。
本作は、テレビドラマ版『イチケイのカラス』が好きだった人が一番ハマれると思います。原作漫画が好きだった人も設定違いを受入れられる人なら問題なしかな?あと、法廷劇が薄味で激推しできないが、ミステリ好きにもおすすめ。
入間と坂間が担当する事件の概要は?
東京地方裁判所 第3支部 第1刑事部(通称イチケイ)で特例判事補だった坂間千鶴(黒木華)は「他職経験制度」を利用し、弁護士として岡山県 日尾美町に赴任するが、お年寄りの自動車事故「大桃ころりん事件」しか仕事がない状況。
その事件すらイケメン人権派弁護士の月本信吾(斎藤工)に取られそうに。坂間は、月本の「地元を支える大企業シキハマ工場による汚染」調査を手伝うことに。違法入手した水は汚染されてたが、大学教授も買収されてシキハマが勝訴。
月本がシキハマから金を受け取ったと知った坂間は落胆。一方、隣町の秋名市に異動してた入間みちお(竹野内豊)は、イージス艦との衝突事故で死亡した船長の妻の事件を担当し「職権発動」したが、防衛大臣の圧力で裁判官を変更され…
以上が序盤のあらすじです。ドラマ版『イチケイのカラス』は裁判官が主人公だったんですね。映画では、黒木華が演じる弁護士と、竹野内豊が演じる裁判官が主人公なので、かなり異色です。それなのに法廷ミステリシーンは少なめで残念。
地元の有力な就職先である企業が、不祥事を隠蔽する話はよくあるので大方は予想どおりで新鮮さは皆無。ただし、その公害事件に「イージス艦衝突事件」と「大桃ころりん自動車事故」がからんでくる後半の展開はミステリ的にも見事。
大桃が転がり川に流され真っ二つになったのは、岡山県の名物「桃太郎」にちなんででしょうね。事件がなくて暇だからか、模型が立派すぎ(笑)。すぐ阻止された「職権発動」ですが本来の意味はわからず…。ドラマのネタかな?
次の犠牲者は誰?汚染を証明する切り札とは?
月本は正義に熱い弁護士でしたが、耐震偽装で内部告発させた妹が会社に殺されてからヤル気を失ったと判明。子どもが汚染された顧客を、坂間が弁護。しかしその店には石が投げられ、坂間の部屋も放火され、月本は殺害されます。
坂間は、入間の管轄の秋名町のシキハマ本社と「健康被害損害賠償訴訟」を争います。物的証拠がなく、入間の指示で坂間が自費で土壌調査をすることに。そしてシキハマ工場が定期的に汚染土壌を運搬してたことをつきとめます。
冒頭の「大桃ころりん事件」で事故の原因となった砂ぼこりを車から採取し、その汚染状況を裁判での切り札として提示。一方、入間は釣りに明けくれながら、地元漁師と親しくなり、無人島設置の監視カメラでイージス艦の秘密をゲット。
以上が中盤のネタバレあらすじです。本作で最も残念だったのは「月本弁護士の殺害」です。日本のTVドラマは人情ネタで泣かせにくる傾向にあるけど、その手法を映画に持ち込むと安っぽく見えるので大反対。世界に出せない恥ずかしさ。
月本の殺害理由を聞いても、動機として弱すぎるので「涙をさそうだけの演出」にしか思えず、大ケガくらいでよかったのでは?シキハマが、放火したり、店へ石を投げたり、説明会を妨害したり…は現実でも起こりそうですが。
たわいもない自動車事故「大桃ころりん事件」がキーになったのは驚きました。砂ぼこりは何かあると思ったけど、この時点ではわすれてたので。入間の釣りは「ひらめ」の汚染を証明するためと思ったけど、それは深読みでした。
結末は?真犯人の正体は?公害の真相とは?
裁判では、入間裁判官がイージス艦 衝突船長の妻を呼び、船員たちが汚染物質で意識混乱して事故が発生したと伝えます。その船は汚染土壌を運搬中だったが、一部もれてたようです。大桃ころりん事件の砂ぼこりが、もれてた証拠です。
船長は運搬物が汚染土壌だと知ってたようです。その妻は、防衛大臣への障害未遂の罪をつぐなうと誓います。坂間弁護士は、友人でシキハマの産業医でもある小早川悦子(吉田羊)を証人席へ呼び、公害病に気づいてたか質問。
多くの被害者を見てきた小早川は「日尾美町が町ぐるみで汚染被害を隠蔽」してたと告白。町の大半の家族が務めるシキハマ工場は、新しい汚染基準を満たせず、本社からは独自改善を求められ、国の助成金ももらえず行きづまってました。
工場閉鎖になると800人の従業員も町の商店街等も露頭に迷うので、住民全員で隠蔽したのです。事実を公表しようとした月本は、シキハマの弁護士が殺害。真相を隠した産業医、町役場職員、工場長も逮捕されます。船長も仲間でした。
以上が終盤のネタバレあらすじです。ここで「シキハマ工場の汚染」「イージス艦との衝突事件」「大桃との自動車事故」の3つの事件がつながりました。全く予想できなかった展開なので驚き。
シキハマ工場の汚染について、産業医がわりと簡単に白状したのは少しあっさりすぎ。今までどれだけ犠牲者が出ても町全体を守るために目をつむってたのに、船長と月本の死だけで心折れたのは、もっと深い理由がほしいかも。
月本が殺害された動機は納得できないし、顧問弁護士が実行犯というのも無理がありすぎます。坂間の部屋を放火したのが、和菓子屋の兄ちゃんだったのも意外というより薄っぺらい。最後に商店街が閉まっていくのは厳しい結果ですね。
イージス艦の衝突に隠された国家機密とは?
防衛大臣と会った入間は、衝突時にイージス艦から大臣が脱出した映像について話します。そのイージス艦には極秘裏に「新型対地ミサイル」が搭載されてテスト運航中だったので、それを隠さないと日本の防衛が数年遅れる事態でした。
防衛大臣が裁判官を入間から変更した理由は、幹事長の息子であるイージス艦の船長を守るためでも、自分の保身のためでもなかったのです。それが証拠に、裁判後に防衛大臣の職を辞任して地元で一からやりなおすと宣言します。
以上がラストまでのネタバレです。イージス艦の国家機密については月並みですが、日本の未来のためだけにその秘密を守ろうとした政治家の存在はめずらしいですね。実際にもそんな政治家が1人でもいればもっと世の中よくなってそう。
ただ1つ疑問なのは、あんなに暗い中、事故や大臣を見ていた漁師がいればイージス艦の設備で気づかれたでしょう。無人島からの監視カメラでも、遠すぎるし暗くて人物までは判定できないと思うのですが。
『映画 イチケイのカラス』私の感想と評価
原作もTVドラマも未視聴なのでスルー予定でしたが、ミステリ的に興味がわいたので観たら本筋はよく練りこまれたミステリ映画でかなり気に入りました。ドラマ観てなくても独立した物語として理解できるので好印象。
ただ、客席の笑いの理由がわからなかったシーンがいくつもあったので、やはりドラマ視聴者ほどは対象ではなかったのでしょうか。また、ストーリー面では不要な斎藤工の退場が、過剰な感動演出に思えたので残念でした。
イージス艦の国家機密をからめた法廷劇をもっと濃厚に描くためには『イチケイのカラス』でない方が得策だったようにも思えます。とはいえ、批判されがちなフジテレビのドラマ続編の中ではわりといい水準の映画だと感じます!
私の評価 64/100(60が平均)
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