映画『未来のミライ』評価は?ネタバレ感想考察あらすじ/違和感の理由は?家族を認識する物心?

『未来のミライ』あらすじ概要
細田守監督の長編アニメ映画5作目。両親の愛情が産まれた妹に移り、妹を好きくなれないくんちゃんの前に未来のミライが現れます。家族の過去を知るにつれ、くんちゃんは…。くんちゃんが妹好きになるきっかけは?ひいじいじのいい話とは?(ネタバレあらすじ↓)
映画名/邦題 | 未来のミライ |
日本公開日 | 2018/7/20 [予告↓]上映時間 98分 |
映倫区分 | 日本 G(年齢制限なし) |
映画監督 | 細田守 [キャスト↓] |
配給/製作/画像 | ©東宝/スタジオ地図 |
シリーズ/関連 | 細田守監督アニメ映画 |
日本興行収入 | 28.8億円(年間20位) |
平均評価★★★★★63(私の評価↓は含まず) |
『未来のミライ』予告動画
キャラクター(キャスト/出演者。日本語吹き替え声優)
『未来のミライ』ネタバレあらすじ
この先はネタバレありのあらすじです。続編前作や関連映画は、細田守監督アニメ映画一覧もご参考に。
おかあさん(声:麻生久美子)が赤ちゃんを産んで病院から家へ戻って来ました。今までおとうさん(星野源)と3人家族で両親の愛情を独占してた、くんちゃん(上白石萌歌)は相手にされる時間が減り、駄々をこねたり妹に悪さしたりします。
未来のミライちゃんが来た目的は?(ネタバレあらすじ)
くんちゃんは両親の気を引こうとするが上手くいかず、「未来」と名付けられた妹を新幹線でたたいてしかられ「ミライちゃん、すきくない」と言います。母親はすぐ復職し、在宅勤務の父親は家事と仕事とくんちゃんの世話で大忙しです。
くんちゃんは疎外感をもち庭へ出ると、見知らぬ男性が「君が生まれる前は私が王子だった」と話しかけてくるが、ボールを追いかける姿を見て、ペット犬のゆっこ(吉原光夫)と気づいたくんちゃんは尻尾を抜いて自分に付けて走り回ります。
別の日、未来ちゃんの顔にくじらクッキーをつけ遊ぶくんちゃんは、庭のクッキーをたどります。するとセーラー服の「未来のミライ(黒木華)」が立ってて、お雛様を1日しまい忘れると1年結婚がのびると心配し、苦戦して片付けます。
くんちゃんは時間旅行で成長する?(ネタバレあらすじ)
ある日、おかあさんの子ども時代の写真を、くんちゃんも一緒に見ました。片付けできないくんちゃんは駄々をこねて庭へ出ると、泣いてる少女(母)がいてなでます。少女は猫を飼ってほしいので、ダメと言う祖母の靴に手紙を入れます。
少女は「散らかした方が面白い」と、くんちゃんと一緒に家中散らかすが、母親が帰宅するとくんちゃんを逃した後ひどく叱られます。別の日、くんちゃんは父親と公園へ行き補助輪なし自転車の練習するが、成功せず心細くてあきらめます。
くんちゃんが目覚めると、戦争で足を負傷したと言う青年(声:福山雅治)がいて、馬やバイクに乗せてもらい「乗るコツは先の方を見ること」と教わります。くんちゃんはおとうさんと公園へ行き、自転車に乗れるようになり他の子達と遊びます。
家族を認識する時?親も成長(ネタバレあらすじ)
家族キャンプに出かける日、くんちゃんは黄色ズボンをはきたいとワガママ言ってると、家族は誰もいなくなります。庭に出ると高校生の少年がいて「楽しいキャンプ前にワガママ言うな。それ乗るなよ」というのも聞かず電車に飛び乗ります。
くんちゃんは電車を眺めながら東京駅に到着します。遺失物受付ロボットに両親の名前も他の家族も伝えられないくんちゃんは「ひとりぼっちの国」行き新幹線に吸い込まれるが「ミライちゃんのお兄ちゃん」と叫ぶと未来ちゃんに救われます。
ミライちゃんはくんちゃんと手をつなぎ空を飛び、家族の歴史を見せます。父は病弱で補助輪なし自転車に乗れたのが遅かった事、ゆっこが母犬と分かれる場面、母は小鳥を傷つけた猫を少し苦手になった事、戦争中に海に落ち泳いで生還したひいじいじと彼に挑まれた競争で負けてあげたひいばあば等を見ます。
くんちゃんは黄色ズボンをはかず青色で我慢します。おかあさんとおとうさんは、車への積みこみ中に「いい親になってる。そこそこで充分、最悪じゃなきゃいい」と言い合います。両親に呼ばれたくんちゃんが「はーい」と言うと、ミライちゃんも一緒に叫びます。
ネタバレ感想『未来のミライ』解説や評価レビュー
この先はネタバレありの感想考察です。続編前作や関連映画は、細田守監督アニメ映画一覧もご参考に。
細田守監督と受賞映画賞について
細田守監督の長編オリジナルアニメ映画(一覧)の5作目です。興行収入も上映スクリーン数も新作のたびに増えてる人気監督ですが、映画の評価は下降ぎみなのが気になります。
『未来のミライ』の興行収入は前作『バケモノの子』の半分にも達しませんでした。28億円以上なので大ヒットですが、配給・製作側の目標値は未達と思われ、次回作の資金集めの難航が心配です。
日本国内では宣伝内容との違いなどで厳しい評価を受けてますが、欧米では好意的に受け止められ、カンヌ映画祭、アヌシー国際アニメーション映画祭に選出されただけでなく、アニー賞の長編インディペンデント作品賞を受賞しています。
アカデミー賞、ゴールデングローブ賞いずれも長編アニメ賞にノミネートしたけど両方とも『スパイダーマン スパイダーバース』が受賞しました。日本アカデミー賞アニメーション作品賞は受賞しました。
欧米でウケた理由は、日本よりも子育てや家族に関心が強いからかもしれません。または字幕や現地語吹替で観られるため、元の声優への違和感がないのも1つの理由ではないかと感じています。

タレント声優問題とは?
洋画やアニメの日本語吹き替えは、通常は本職の声優がつとめますが、テレビ等での宣伝を優先したい場合は有名タレントや芸人や売出し中の芸能人が演じる機会も増えています。賛否あるけど、私は「上手ければOK」というスタンスです。
細田守監督はスタジオジブリと同様にプロ声優より一般タレントの「自然な発声」を好むようで、主要キャラクターの声優にはほぼ芸能人を起用します。しかし過去作でも「声があってない」問題が発生してます。
『未来のミライ』でも、主人公くんちゃんの上白石萌歌の声が、全く4歳の男の子の声に聞こえません。普通は下手でも慣れてくるのですが最後まで気になってしまい残念でした。もちろん上白石萌歌のせいではなく、監督・制作陣の責任です。
試しにくんちゃんの声を目を閉じて聞いてみてください。10代の女の子にしか聞こえませんよ。あと声量が細いですね。ちなみに上白石萌歌の姉は『君の名は。』の三葉の声優として絶賛された上白石萌音です。
他にも、おとうさんの星野源、青年(ひいじいじ)の福山雅治も少し違和感あります。ミライちゃんの黒木華、おかあさんの麻生久美子、じいじの役所広司、ばあばの宮崎美子などは問題ないです。
テーマは「嫉妬。他者の許容。親子の成長。家族の奇跡」?
SF要素に関しては下で書きますが、くんちゃんが見た内容はただの「夢や空想」だとシンプルに考えた方が、細田守監督が描きたかった「家族の物語」に焦点があたり理解しやすいです。深読みすると「?」で終わってしまうので。
くんちゃんは両親やじいじばあばの愛情を一身に受けて「世界の中心」にいたのに、妹ミライちゃんが生まれた後は「世界で二番目」になり「嫉妬」で心は闇に落ち、新幹線模型を武器にするほどです。フォースの暗黒面にのまれたみたいです。
そんなくんちゃんもラストの東京駅では「くんちゃんはミライちゃんのお兄ちゃん」と「ミライちゃんを大切な家族の一員」だと認めます。「他者を許容」する物心をついた瞬間です。成長のきっかけが描かれてないのは映画として残念ですが。
ミライちゃんを許容し認識できたくんちゃんは、この後、おかあさんとおとうさんの名前も知ることになるのでしょう。名前で呼びあわない両親は「アイデンティティの放棄」だという皮肉を描きたかったのかもしれませんが。
本作『未来のミライ』では、くんちゃんの成長だけでなく、子育てする若い夫婦の成長も描いてて、ラストでは「お互い良い母親と父親になってるかな。そこそこで充分、最悪じゃきゃね」とたたえあって終わります。
また「くんちゃんやミライちゃんが存在することの奇跡」も描いています。例えとして、ひいじいじが戦争で足を負傷した事、そんな足でも好きな女性にかけっこを申し込んだ事、ひいばあばが負けてあげた事、そのどれか1つでもなければ結婚せず、今の家族は存在しないのです。
あともう一つテーマとして付け加えたいのは「しつけの大切さ。子のワガママは両親の責任」です。映画内では甘やかしすぎな描写はないので、共働きでしつけがいき届いてないだけかもしれませんが。
『万引き家族』と対象的!子育てNGな家?
『未来のミライ』はアカデミー賞の長編アニメ賞にノミネートしましたが、日本からは同じ年に『万引き家族』も外国映画賞にノミネートしました。それぞれアニー賞、カンヌ最高賞も受賞してます。
『万引き家族』は貧困層の家族を描いた映画で「産んだだけでは親になれない。産みの親か育ての親か」等がテーマの素晴らしい作品なのでぜひおすすめです。『未来のミライ』はその真逆なのが皮肉で「恵まれた富裕層の子育て幸福物語」です。
まず驚くのが「おもちゃが多すぎる」こと。日本人だけでなく海外からもツッコまれてました。せめて親戚からのお下がりという設定にすれば良かったと思います。それ以上に驚くのが、大金のかかってそうなデザインハウスです。
若い夫婦なのでさすがに坪数は小さめですが、あれだけ独特な建築物を作るのに何千万円かかるんでしょうか。最大のツッコミどころは建築家である父親自身の設計なのに「子育てや高齢者の親に全く配慮されてない段の多い構造」です。
芸術家としてデザインを優先し、狭い土地なので縦を有効活用しようとしたのはわかるけど、大人でも長居したくない構造ですよね。キッチンも使いづらそうだし、子供が成長後に個室を用意できるか不安だし、何より売却時は大損しそうです。
SFロジック破綻?無理やり解釈すると?
『未来のミライ』はただの「家族の成長物語」でもよかったのに『君の名は。』の大ヒットにあやかるためか、SF的タイムリープと異世界ファンタジーを混在させた事により、本筋の家族物語さえ混乱させてます。『バケモノの子』と同様、現実と虚構の線引に失敗してると感じます。
タイムリープの原因は「庭の木が家族のインデックス(索引)になってる」からだそうですが、未来のミライや自分が過去に来たのは「婚期が遅れるからヒナ人形をしまいたい」「キャンプ前のわがままを止めるため」というつまらない理由です。
しかも未来ちゃんと赤ちゃんは同時に存在できなかったのに、くんちゃんは高校時代の自分と話すことさえできてて『ドラえもん』もびっくりなほどロジック崩壊しています。
さらに分かりづらくしてる原因は「タイムリープ」だけでなく「異世界ファンタジー」も混ぜたことです。例えば、犬のゆっこが擬人化されたり、尻尾を奪って自分につけたら犬に変身できたり、異世界の東京駅に行けたりもしました。
以上のようなSFやファンタジー設定を無理やり成立させるために、いくつか解釈を考えてみました。ちなみに、どれも細田守監督の考えと違うのは承知です。『海獣の子供』みたいに抽象画を楽しむように観るのが正解なのかも。
- 庭の木の秘密を見つけた兄妹が軽い気持ちで過去に干渉してる
- 全て庭の木が見せた夢か幻影
- 神か魔術師か超能力者の未来ちゃんが過去の自分を守ろうとしてる
- 嫉妬により精神崩壊したくんちゃんが見た夢
- 能力者である犬のゆっこが見せた夢
宣伝や予告編の期待が本編で裏切られてる?
『未来のミライ』はSFロジック破綻だけでなく「宣伝や予告編との乖離が大きすぎる」のも問題です。特にポスターの「ミライちゃんとくんちゃんが手をつないで空を飛んでる姿」は、SFやファンタジーの世界観を想像させワクワクしました。
しかし映画内でそのシーンは「夢や空想」に近い場面だし、ストーリーにはほぼ関与しないので「イメージ映像」のようです。映画のテーマを考えると、ポスタービジュアルは「新旧の家族の集合写真」などが適切だったと思います。
『君の名は。』の大ヒット以降、同じような宣伝の見せ方で興行収入的に失敗したアニメ映画が続いてるので「客寄せ」のための誇大広告で勝負するのではなく、面白い映画を作るという本質で勝負してほしいです。
『未来のミライ』総括と細田守監督の次回作
細田守監督アニメ映画なので、あいかわらず作画は素晴らしいし、スピードシーンの躍動感も見事です。家族の系譜を見せながら、子の親として、妹の兄としての成長を描くシーンでも涙しそうになりました。
ただ、SFやファンタジーならなんでもありという軽率さやロジック無視が目立ちすぎて、本筋の家族物語もあまり楽しめず残念です。くんちゃんのワガママも声の違和感のせいか、クソガキ感が増しててイライラ映画の代表作になりそうです。
くんちゃんは年相応かもしれないけど、夏休みの大作映画でお金を払ってまでして、そんなワガママや「子育ては大変。イクメンもつらいよ」的なアニメ映画を好んで観たい人は多くないと思います。娯楽性も監督作では一番低いですし。
細田守監督が次回作で「家族ドラマ映画」を作り続けるのか「SFファンタジー路線」に回帰するのかわかりません。私は『サマーウォーズ』が好きなので回帰してほしいけど、家族ドラマに徹した方が監督本人は幸せな気もします。2020年頃に観られるのでしょうか。今から楽しみにしてます!
続編前作や関連映画は、細田守監督アニメ映画一覧もご参考に。
『未来のミライ』シリーズ順番・映画ランキングや映画賞
- 細田守監督アニメ映画
- 2018年興行収入ランキング日本
- アカデミー賞(2003-2023年)
- 報知映画賞(1990-2023年)
- 日本アカデミー賞(2006-2023)
- ゴールデングローブ賞(2010-2023)
- Hulu/U-NEXT/dTVおすすめ映画
- ファンタジー/SF映画一覧
- ヒューマンドラマ映画一覧

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